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主宰:川津商事株式会社
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不動産市場概況

〈2016年 3月 31日〉

先般、近年恒例となってきた名古屋不動産投資家調査報告会が開催 された。タイムりーな市場のパブリックコメントが発信された。報 告の中で最も示唆があったのが、名古屋の不動産経済が現在すでに ピークを過ぎていると感じている投資家が非常に増えているという 点である。

先般の地価公示の発表と合致する内容であり、またそれを裏付ける 内容でもあり説得力があった。東京ではすでに投資の採算性が資本 コストを割り込み、投資マネーがあふれている。それが地方にいき わたり始めている状況であるが、その地方である名古屋がすでにピ ーク感を持っているということになる。

一方で、大手建設会社の方の意見では、名古屋も名古屋駅前のプロ ジェクトが終わると仕事がなくなってしまう。もう終わりかよとい う感じだそうだ。前回の好景気が愛知万博の2005年から2007年で あったことを考えると、10年ぶりに来た好市場がすでにピーク感が 出てしまっているわけだ。

弊社が測定している市場プレミアムでも、安倍政権発足以来減少し 続けてきたが、今年の初めに発足当時と同じ水準に戻っており、現 在それを上回る状況にある。この市場のリスクプレミアムを押し上 げた直接の原因は日銀のマイナス金利であるが、本質的な市場のリ スク感は、マイナス金利がいよいよ始まり、このままいつまでも好 景気が続くのだろうか?そろそろ調整するのではないだろうか?ひ ょっとしたら破たんするのではないだろうか?という心配がリスク 感となりリスクプレミアムが市場に増加し始めている。

余談であるが、マイナス金利はしばらく続くのが順当であろうと考 える。すぐに急にやめてしまうとかえって反動が大きい。ヨーロッ パのマイナス金利も長期戦である。マイナス金利で一喜一憂するこ とは卒業すべきである。

市場を俯瞰すると、最近まず企業のM&Aが増えていること。これ は企業の潤沢な内部留保が十分になり過ぎ、マネーが新たな投資先 を求めだしたことを意味する。そして今のそろそろ調整が来るかな という市場のリスク感の高まりは、過去の経験から行くと、いつに なるかわからないが次の局面は調整である。

そしてこの調整が急激な破たんとなれば、今回の好景気はバブルで あったことになり、なだらかな調整で軟着陸すればファンダメンタ ルズの成長であったことになる。調整なんかあったのかなというく らいの軟着陸が望むべき姿である。

この調整までに間に合わそうと駆け込みが今全国で起きている。こ の機会を逃すと次はいつになるかわからないからだ。地方によって は1990年以降ずっと待ってきたところもある。名古屋市が検討 している名古屋城復興もそれである。本来なら財政難で反対が出る はずであるが、全国の地方公共団体でこのような公共投資の構想が 具体化し始めている。

投資は果敢なチャレンジがなくてはできない。やるときはやらない とできない。やる前から負債を考える良識ぶった臆病者では実務は まったく前に進まない。景気に関係なく必要な時に必要なことをす るというのは、実務者の発想ではない。タイミングが合えば多少の 見切り発車でも進む。タイミングを間違えばどんないい仕事もうま くはいかない。

東京で起きている渋谷駅前などの私鉄による大きな再開発は、地価 が上昇し含み益が増している財務的に余裕のある時に「やってしま え」とばかりに進んでいる。そして不景気になるとその投資の収益 でなんとか乗り切る。これが机上論でなく実務である。

10年前のファンドバブルにより過剰と言われた名古屋駅前の賃貸 マンションはすでに不足状態になっている。良識ぶっても不景気に は必要なものもできない。好景気しかできないのである。全国でチ キンレースが始まっている。小さな心臓をバクバク言わせながらな んとかゴールに駆け込みたいわけだ。

もうひと踏ん張りの民間の駆け込み需要と共に、公共事業の駆け込 み需要を何とか期待したい。

最後に独り言である。ビジネス及び生産活動の最終目的は資本の蓄 積にある。これが資本主義である。資本というのは様々なビジネス を通じて企業という器に蓄積する価値である。都市でもビジネスを 通じて様々な価値が創造される。都市という器に蓄積される価値は 都市エクイティである。これは現時点では具体的に地価の上昇によ って顕在化する。地価の上昇は資本主義の生産活動の本質と合致す るものである。

以上

バブルチキンレース破綻