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これからのコミュニティー

〈2016年 3月 10日〉

先般、平成27年度領域シンポジウムが東京で開催された。このシン ポジウムは科学技術振興機構の非常に大きな予算と多くの研究者を 巻き込んだ6年間の研究の報告である。「コミュニティで作る新しい 高齢化社会のデザイン」という題で東京大学の安田講堂で開かれ、 全国から多くの自治体関係者が参加した、ある意味国家プロジェク トと言って良いくらいの研究の成果報告でありその影響力も大きい。

この中の「認知症予防のコミュニティ創出と効果の検証」の報告か ら筆者が考えたことを紹介したい。この研究は奇しくも名古屋の緑 区で行われた検証報告である。結論は地域のコミュニティが行う認 知症予防プログラムの効果が検証されたというものである。

具体的には、認知症予備群の人を地域の人たちが喫茶店などへ連れ 出すプログラムが機能したというものである。つまり認知症を支え る地域コミュニティがないと予備軍を止めることができず病気化し てしまうという研究成果である。

悲しいかな、認知症は若年認知症に至っては40歳から発症する。そ れが50歳代、60歳代になるにつれて認知症予備軍が増加してくる ことは周知のとおりである。今までは認知症になると、病院などに 連れていき認知症でない医者、看護婦の手にゆだねられるのが社会 システムであった。

これまでの社会の考えは万事このように、お金を稼げなくなった老 人を稼げる若者の年金で支える。生活ができなくなった人を生活で きる人によって支えてもらう。障害のある人が障害のない人に支え てもらう。弱者が強者に支えてもらうように、二項分離で何らかの 問題を持った人たちが、そうでない人たちに支えてもらう社会であ った。

しかし例えば年金などのように、以前は9人で1人の老人を支えて いたのが、3人で1人となり、将来は1人で1人を支えなくてはな らなくなる。これはもう両者が破たんしてしまうシステムである。

余談であるが老人1人を若者1人で支える世界は、逆に老人が若者 を支える世界になるだろう。若者がそこまで少なくなると、生活・ 教育インフラなどが市場で成り立たなくなり、支える立場ではなく 支えられる立場に逆転するだろうと筆者は考える。

このように従来の社会の仕組みが通用しなくなるなかで、今後高齢 社会に対応するためにはどのようなコミュニティーが必要になる か?となる。そこでは認知症予備軍と同じ世代、同じ地域の人がさ せるコミュニティ概念が必要になるというものだ。

この考えをもっと拡張してわかりやすくすると、例えば仲のいい友 達グループがあるとする。地域の仲間も含めて、ゴルフ仲間、同窓 会、写真など趣味の仲間の集まりである。そこで誰かが認知症予備 軍になる可能性があるわけだ。今までであれば、その人を排除して しかるべき病院にゆだね、残った人たちでグループが運営される。 しかしそれではまず認知症であふれる病院が成り立たなくなり、仲 良しグループでも次に入ってくる若者が少なく、結果的にそのグル ープも存続できなくなる。

従来の考え方では、認知症であふれる病院コミュニティーも財政破 たんし、残った仲良しグループもやがて縮小し、両者が破たんして しまうことになる。そこで認知症予備軍の人及びそうなる可能性の 高齢者を排除せず、そのグループで支えるコミュニティーシステム が必要になるわけだ。そしてそれが認知症の予防に効果を上げると いう研究結果である。

具体的にいえば、同窓会で日にちを間違えだす参加者が増えてくる。 また会場に来るはずの幹事が道に迷い誰かが迎えいに行かないけな くなる。会費を払ったのにもらってないと言い出す。こういった人 を排除し誰かにゆだねるのではなく、受け入れ支えることにより、 認知症の改善及び予防になる。それをしなければ仲良しグループと いうコミュニティーが存在できなくなるわけだ。

当ニュースレターにおいても参加型都市マネージメントは非常に重 要なテーマであった。つまり他人にゆだねるのではなく、自分たち で解決する、問題に参加するコミュニティーが標榜されているわけ だ。

報告者からで面白い例の提示があった。参加型行政では権限をどう するか?という問題である。教育現場に地域の民間有識者を参加さ せる例である。行政は権限を一切与えたがらない。結果民間有識者 は単なる使い走りになりやる気も生じず成り立たなくなる。この話 が出たとき会場では一斉に笑いがおきた。会場に自治体関係者が多 いのだろう。あんたのことだと周りで指をさす様子も見られ一瞬場 が緩んだ。行政でない者からすると、めったにお目にかからない景 色を見ることができた。

しかし重要な問題だろう。今までの地方社会は行政が立案し、オペ レーションを行ってきた。それが行政コストもかさみ効率が悪すぎ てもう成り立たないわけだ。そうすると行政の立ち位置も変わって こよう。

これからのコミュニティの仕組みが「立案は民意を汲んだ政治家→ オペレーションは民間、ボランティア、NPOが参加する→評価は第 三者有識者が行う→立案へフィードバック。」というようなループ関 係になるのであれば、行政の立ちは「*→*」のようなプラットフ ォームりになるだろう。ますます重要な立ち位置になる。



以上

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