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主宰:川津商事株式会社
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相続と住宅そして住宅

〈2016年 3月 1日〉

マイナス金利については、いつか取り上げなくてはならないと思っ ていますが、もしデフレを脱しきれないとその先にある結末は大き な調整ですから、なかなか取り上げる気になりません。黒田総裁は デフレを脱するまでやり続けるというコミットメントを改めて示し ました。「いよいよ手詰まりと言われていますが、それは違います。 日銀の手詰まりではなく、いよいよ経済学の手詰まりです。」とある 学会会長の言葉が気になります。

マイナス金利がその期待通り機能すればバブルが生じます。もちろ ん家庭金庫も売れますが、必然的に物が買われます。住宅も不動産 も買わざるを得なくなります。デフレ脱却-インフレ(バブル)まで やるというコミットメントですから。だからバブルになります。問 題はその後です。

誰も触れたくない調整です。バブルであればそれは調整とは言いま せん、破たんです。その調整には10年以上の大きなものになる可能 性があります。バブルの定義は、適切な資源配分をゆがめて偏った 資産に過剰な投資が積みあがることを意味します。過剰に積み上げ たものは何か?と言われればその一つが東京である。

当ニュースレターでは、東京オリンピックを成功させるためには、 それまでに一度調整が必要というのが主張です。しかしそれもタイ ミングがあります。これ以上先送りされると調整が破たんになって しまいます。まぁ筆者のいい加減な懸念です。

前置きでしか触れたくない話題を終えて、最近、不動産ビジネスで 相続ビジネスが盛り上がっています。少々気になっている点をピッ クアップします。ご承知の通り相続の課税標準が引き下げられまし た。これで一番喜んでいるのが弁護士と言われています。消費者金 融のグレーゾーン訴訟が終わり、過剰労働時間問題は思ったより市 場がなく、交通事故裁判はすでに得意不得意の弁護士が分けられて おり、そんな中で相続争いが弁護士の間では非常に魅力的な市場と して急浮上しているそうです。

課税標準が引き下げられ、弁護士の介入ということは、相続が争い 事になることが予想されるはけです。そうならない司法改革も必要 かと思うわけです。

もう一つ相続関連の重要な問題です。地方の資産の相続人のほとん どが今、東京のサラリーマン化しているわけです。ということは、 地方の資産が強制的に東京在住の相続人に相続され、地方の資産が 東京に強制的に吸収されることになります。地方はますます衰退し ます。地方創生程度の政策では東京集中の流れは止まりません。

更にもう一つ、これは活字化することが憚れる本来タブー視されて いることですが、有効な相続人がいない資産家が増えており、彼ら は相続開始前に“よそ”から養子を取り苗字、資産の継承を託す例 が増えています。この問題が何を意味するか。

さて住宅問題ですが。空き家問題については当ニュースレターでも 何度も取り上げてきました。私どもが言うまでもなく、百花繚乱の 市場も、何をしたらいいかわかっているはずです。それでも動きま せん。これこそが岩盤規制ではなく永久凍土の規制です。

日本の住宅は新築を購入した時点で、債務超過になり20年で住宅の 価値がほとんどゼロになることが問題のポイントです。もし新築で 購入した住宅が20年後、購入した価格以上であったら日本の物価、 経済成長をどれくらい押し上げるでしょうか。

難しい計算で煙に巻くエコノミストに計算してもらう必要ありませ ん。素人で考えてみましょう。20年間、年率15%減損し続けると資 産価値は5%以下になってしまいます。資産価格×0.85×0.85×・・・ を20回電卓をたたいてください。

今土地を除いた新築住宅価格を平均2000万円として、年間新築住宅 が100万戸市場に供給されているとします。つまり20兆円の資産が 供給されています。この資産の価値が毎年15%の減損しているわけ です。これをもしなくすと3兆円の損失が防げられます。

日本の年間GDPが500兆円とするとプラス0.6%の実質成長が実現 します。もちろんそれによって新築戸数が減ればその分資産価値増 が減りますが、一方で既存のすべての住宅資産の価値の減損を止め ることができればどちらが価値はあるでしょうか?

2%の名目成長を実現するために金融政策だけに依存すると、だれも 触れたくない大変な麻薬の副作用があります。今の日本は薬は厳禁 なはずです。しかし実際は日本中が金融緩和という麻薬を浴び続け ています。薬だけで景気を立て直そうとしています。

金融政策だけに偏らない、リアル経済の岩盤規制の破壊による経済 成長が必要になります。非常に明確な話です。住宅が価値を失わな い市場を構築することが、空き家問題、都市インフラの老朽化問題 だけでなくデフレ問題、エネルギー政策にも貢献します。

連帯保証人を取り続ける金融システム。借地借家法を擁護し続ける 立法政治システム。新築に偏ったビジネスモデルしかない住宅業界。 集中し続けることによる資産価値の成長を容認し続ける東京。この 岩盤規制が永久凍土になりそうです。

以上

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