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新聞書評 ポピュリズム

〈2016年 2月 10日〉

さて2月も過ぎ、春になってくると陽気に誘われていろんなものが ニョキニョキと出てきます。今回は2月4日、5日に日経、読売新 聞二紙に掲載された、経済教室「ポピュリズムにどう向き合う1 吉田徹)、2(加藤創太)」と、想う「フランスは病んでいる(エ マニュエル・トッド)」を読み比べてみる。

多くの方がすでに読まれたと思う。読まれていない方は是非読んで いただきたい。

まず吉田氏の「ポピュリズムにどう向き合う」ではまず、ポピュリ ズムとは社会のエリート・既得権益層に虐げられた声なき多数派を 代表すると定義し、代表制民主主義が機能しないとき、すなわち民 意を取り込めないときに台頭するとしている。

1990年代既得権域を打破するために市場主義を要求した新自由主 義。金融資本単一ユーロに対抗して社会福祉を要求した第三の道。 社会福祉が移民に重きを置き始め自分たちに再配分がなされなくな ったことに対する反抗が現在のヨーロッパで起きている移民排斥、 極右化の動きである。これらすべてポピュリズムと言われている。

加藤氏はポピュリズムは、誤った情報に操作されるとナチスのよう なファシズムを登場させてしまった過去の苦いケースがあるとして いる。ポピュリズムが悪い結果となるのは、効率よく政治情報を配 信できない政治の問題だとしている。

読売新聞に登場したエマニュエル・トッド氏の主張は、先般のパリ で起きたテロ後行われた400万人を超す大行進の参加者が、地理的 には周辺、価値観では権威・階級、階層は中間層、社会党支持者で あったというものである。

フランスは、「自由平等」と「権威階級」という二つの違った概念を 重視するグループに分けられる。前者がカトリック信仰を捨てフラ ンス革命を支持した層である。後者が信仰を重視し戦争占領時にナ チスを支持した層としている(これには誇張があるという批判があ ると本人が記している)。この権威階級グループがまさに上記の参加 者になるそうだ。

もう一つトッド氏が主張している。日欧に共通していることとして、 教育による階層が確立していること。高齢化。宗教の失墜を指摘し ている。その中で「個人が孤立して、利己主義になり、社会が内向 きになり、未来展望がなくなる。」とし、この孤立、利己主義、内向 き志向がポピュリズムになり、既得権益・エリート層に向かい、ナ ショナリズム・極右化の台頭、閉鎖的になるとしている。

世界の中でフランスの論壇を軽視・否定する人たちは多い。その背 景には、フランスは過去の多くでその革命、植民地政策、戦争、イ デオロギー論争など勝者となることなく終わっていることにもある。 しかしフランスは常に史上の縮図の渦中にあり、しかも勝者となる ことなく結果を受け入れている姿に現実を見ることができると考え る。

これらをまとめると、ポピュリズムというのは、政治的エリートと の間の格差が生じこれが社会問題化してくると登場し、さらに正し い政治的情報が効率的に届けられないと間違った選択がなされてし まうということになる。その結果戦争などに進めば一番犠牲になる のは国民である。だからポピュリズムは危険となるが、ポピュリズ ムを生む原因は国民ではないわけだ。

近年、日本でもポピュリズムの台頭が新聞紙上で指摘されている。 これを受けて考えてみよう。日本にもポピュリズムがあるとすると、 それが向かっている既得権者、エリート層とはいったい誰になるの か?適切な政治情報の効率的な提供を阻害しているのは何か?そし てどんな社会問題が現行の民主主義制度が解決できていないのか?

まず日本では欧米とは違い、金融資本の多くが企業に内部留保化さ れていて、それほどアクティブになっていない。社会資本と金融資 本に欧米のようなギャップが顕在化しているとは言えない。

再生が大きな課題となっている地方からすると、既得権益は東京(東 京に住んでいる人ではなく東京という概念)になろう。将来展望を 持てない若者からすれば既得権益は高齢者になろう。教育格差はそ のまま所得格差、地域格差となりエリート層を構成している。一方、 アジアの中で著しく台頭してきた中国、韓国から見ると、日本が既 得権益になるのかもしれない。アジアの中での日本の立ち位置の変 化は、日本が直面している大きな問題となっている。

日経に登場する加藤氏によると、国民がすべての政治的情報に触れ て吟味することはできない。従ってその吟味を託せられる責任政党 が必要になるとしている。この「責任政党」とはすべての品質情報 を吟味しなくても信頼がおける高級ブランド品のようなものらし い?

不動産投資ビジネスは、社会に対する長期的な投資ビジネスである。 社会のファンダメンタルズ、趨勢を的確に把握する必要がある。い ろんなことを思いめぐらして是非もう一度、二紙を読み返していた だきたい。



以上

ポピュリズム政治的エリート責任政党テロ格差都市戦略