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主宰:川津商事株式会社
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名古屋駅前エリアの回遊性の考え方

〈2016年 2月 5日〉

前回名古屋駅前にオープンするイセタンハウスを考えるにあたり、 都市の回遊性を取り上げた。その中で「回遊性戦略には大きく二つ の戦略がある。一つは囲い込みである。例えばペデストリアンデッ キ、ユニモールなどの地下街により来訪者を完全に意図する方向に 誘導して、そこから回離させない方法である。」と紹介した。

関連した質問をいただいたので、もう少し言及したい。百貨店など の商業施設では、多くのお客を来訪させて、多くの時間快適商業施 設内で過ごしていただき、商品の購買・飲食を通じてお金の消費、 快適な時間の消費を行い消費満足を実現して商業施設に対するロイ ヤリティーを持ってもらい、またリピートしてもらう。

つまり多くの人に来てもらい、できる限り長くいていただきお金を すべて使ってもらい満足してもらうことを目指す。そのために必要 な最適な空間を提供しなくてはならない。そのためにはペデトリア ンデッキ、エスカレータ、動く遊歩道などで優先的に誘導し、時に 外に出にくい構造となる。これが囲い込みである。

一方、駅などは、その地域のすべての人に貢献する必要がある。お のずとバリアフリーのアクセスタビリティーの高い構造を必要とす る。有名な東京渋谷駅前のスクランブル交差点のように自由度の高 いアクセス構造を併設する。横断歩道でも異形幅の先が広がった構 造を持てば方向性の選択に自由度が高まる。ちょっとした工夫であ るが、アクセスタビリティーが高まる工夫が全国で随所でなされて いる。

現在の名古屋駅の名鉄近鉄などの再開発構想においてしばしば登場 するぺデストリアンデッキ(2階デッキ通路)は、このエリアの商 業施設の囲い込みの回遊性のネットワークを目指したものである。 しかし名古屋駅前のメインの商業施設だけではない。むしろ鉄道駅 が主体である。鉄道駅利用者の回遊性の生産性を高めるためには横 断歩道など路面のアクセス施設の工夫が必要となる。

そして前回も指摘したが、この二つの回遊性は何も工夫をしなけれ ば衝突してしまう。この衝突は外部不経済となる。商業施設の回遊 性と鉄道利用者の回遊性を衝突することなく、むしろ工夫して都市 全体の生産性を高める必要がある。

この書面で多くの事例を解説することがむつかしいが、仙台駅のぺ デスとリアンデッキ、東京八重洲のぺデストリアンデッキ、あるい は立川のぺデストリアンデッキは、囲い込みとオープンの回遊性の ネットワークのキーとなるところに、エスカレーターを有効に配置 し、回遊性のネットワークの生産性の構造が試みられている。

施設構造による回遊性の向上だけでなく、様々なビジネスモデルに よる回遊性のネットワークの向上が、全国では工夫開発されている。 これらの工夫開発のモチベーションは、都市には様々な回遊性がい くつも存在しており、それらが衝突してしまっては都市の生産性に 貢献しない。回遊性の輻輳が1+1が2だけでなく3,4になる工夫 が都市の生産性の向上になるからである。

一例をあげれば、近年インバウンドでやってくる観光者が爆買いを デパートで行うと、地元の消費者は引いてしまう。これは観光者の 回遊性と地元生活者の回遊性の衝突である。衝突により1+1が2 にならず1.5あるいは1では都市の生産性は損なわれる。これを工 夫により1+1が2以上になる工夫こそがが都市マネジメントに求め られているのである。

名古屋は大都市である。そこにはいくつもの回遊性が輻輳(ふくそ う)している。名古屋の都市戦略を回遊性で考えるなら、回遊性を 作ることよりもむしろ回遊性の生産性を高める工夫、技術革新が求 められるのである。

参考文献 
川津昌作2015「都市の回遊性の概念化に関する考察」日本不動産学会誌112
川津昌作2015「都市の回遊性と消費者行動に関する考察」名古屋学院大学論集Vol.51-3


以上

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