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歴史小説の新しい居場所

〈2016年 1月 15日〉

年が明けても生暖かい気候が続いている。それにもまして気持ち悪 いくらい生暖かいのが長期金利の低下である。当然為替にも影響が 出よう。そして株価の乱高下である。正直気持ち悪いが、正月休み に描いた市場デザインを紹介しよう。

どんな市場が可能性があるか?といえば成長可能性のニッチ産業を 発掘したいわけだ。ニッチとは一般に隙間産業と言われる。語源的 には凸凹、隙間からきている。生物の進化論でニッチといえば「生 態的地位」という言葉になる。

すべての生物には生態的地位がある。例えば大海で泳ぐ魚は、外敵 に襲われそうになると身を隠す場所を持っている。比較的強いウツ ボなどでも身をひそめる岩陰をも持っている。弱小のクマノミはイ ソギンチャクの中に身を隠す場所を持っている。これらの身を隠す 隙間のような場所が生態的地位となる。

進化論では生物が進化すると時、この生態的地位がどんどん変わっ ていくとされている。その様子が自然淘汰であり、自然淘汰を繰り 返して生物は進化していくという説明がなされる。つまり新しいニ ッチと古いニッチがどんどん入れ替わる事こそが、生態系のダイナ ミズムである。

生命が飛躍的に姿を現したカンブリア紀には、まさにこの生態的地 位が爆発的に増えたのであろう。以上が前置きである。

今年のNHKの大河ドラマが真田幸村を取り上げるようだ。筆者は昔、 毎回見ていたが、ある時からきっぱり大河ドラマを見なくなった。 そのきっかけは、それまで大河ドラマは歴史小説の原作に基づいて 描かれていた。例えば海音寺潮五郎の「天と地と」、新田次郎の「武 田信玄」などである。

決してこれらの歴史作家が歴史に忠実とは言わないが、突然NHKは 脚本家と称する放送作家を使い、歴史上存在しない架空の登場人物を登 用して面白おかしく物語を作り出したからである。当時はジェーム ス三木という脚本家がいた。当時NHKが勝手に歴史を歪曲しすぎる ととして批判が起き、大河ドラマの視聴率などの凋落が始まったき っかけともなった。

その背景には歴史小説の人気があったからだ。それ以降NHKも歴史 小説の原作に忠実に回帰しようとしたが、大河ドラマの人気は戻ら なかった。時を経て今回の真田幸村も現在売れっ子の脚本家である 三谷幸喜を登用することとなった。

先般、40歳代の女性に歴史小説は何を読めばいいのか?と聞かれた。

歴史小説といえばかつては男子のオハコであった。過去の時間をさ かのぼるように、どや顔で説明をしてしまった。「当時、最強と言わ れ上洛を待たれた駿河の今川氏が悠長に時をむさぼる間に、甲府の 田舎侍武田晴信が京都へ上る野心を膨らませ、その後門から信濃の 上杉家の傍系、後の謙信が京都を臨み戦国の乱世が一気の佳境を迎え る。」

「満を持して大挙上京した今川義元だが、京都の手前で織田信長と いう若輩の田舎武将に奇襲を浴び没する。殊勲を挙げた織田信長は その勢いに乗って天下を平定するかに見えたが家臣の明智光秀の裏切り にあい短命におわる。明智光秀も天下を取ることなく織田の小姓で あった秀吉に打たれる。権勢をほしいままにしたが豊家も大家を なすことなく、結果的に三河の名もない松平が徳川となり幕府400 年に及ぶ天下をなした。」

団塊の世代から概ね50代後半の男子であれば、海音寺潮五郎、 山岡荘八、新田次郎、柴田錬三郎、司馬遼太郎、五味康介、藤沢周 平あるいは吉川栄治文学、山手樹一郎文学の世界にどっぷりつかっ た。彼らからすると、北方謙三などはハードボイルド小説から男臭 さを求めて歴史作家に転向した青臭い作家でしかなかった。

「武田信玄、上杉謙信の時代から読むことを勧めるが、天と地とか ら読むか、武田信玄から先に読むかで歴史のスタートが変わってく る。」とばかりに昔の蘊蓄を押し付けてしまった。さてこの女性が愛 知県図書館に行き新田次郎とか海音寺潮五郎を探すと、なんと書棚 にない。みな書庫にお蔵入りとなっている作家ばかりだそうだ。

NHKの大河ドラマが人気がないはずである。歴史小説を男子が読ま なくなってしまったのである。それに代わって城とかパワースポッ トに興味を持つ歴女と呼ばれる女性が歴史に興味を持ち始めたよう である。この際、三谷幸喜が面白おかしくであれ、どんな修正を加 えてでも大河ドラマ真田幸村を成功させて、歴史小説の存続を願うばかりであ る。

歴史小説というジャンルが、かつて団塊の世代の男子という生態的 地位を持っていたのが、それを失いつつあるなかで、新しいニッチ を求めて進化しようとしていると解釈するしかしょうがない。

実は昨年英字新聞で非常に多く登場した言葉があるrevisionism″ (修正主義)である。特に日本を名指しでこのテーマを取り 上げる紙もあった。俯瞰する限り世界中で新しい歴史観を求 めて今、現状の「変化」が起きているのかもしれない。変化は自然淘汰を繰 り返し進化となる。自然淘汰されるものは誰で、だれが自然淘汰す るのであろうか?

以上

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