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主宰:川津商事株式会社
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日本の家はウサギ小屋?

〈2014年 4月10日〉

日本の住宅は「ウサギ小屋」であると言われたことがある。これは 日本の小さくてボッコイ家の悪口であった。この舌禍は1979年の ECの報告書で言われたとされている。後になって小さい事を揶揄し たのではなく、小さく画一化した家の形状を表現した誤訳であった という人もいる。

しかし、昭和50年代ごろのアパートを見ると3畳一間に共同トイレ、 共同炊事場といった部屋がたくさんあり、どう言い繕うとも自慢で きたものではない。さて、ではその後どうなっただろうか?現在、 確かに一人当たりの住まい屋の大きさを問えば世界でも上位何位と 言うランクにある。胸を張ってウサギ小屋でないと言えようか?

最近、アメリカで又サブプライムローンの様な、最初低くて後から 高くなる変動金利の住宅ローンが復活していると言われている。こ れは2007年のリーマンショックを引き起こし、新自由主義の西側諸 国を奈落の底に陥れた金融破たんを引き起こしたビジネスモデルで ある。

当時、こんなビジネスモデルができて、低所得者でも家が買えるア メリカと言う所は素晴らしい国だと言う識者が多く居た。私も同様 な立場からいろんな学会でそれを報告したことがある。それが昨今 のアメリカの住宅市場の好調を受けまたアメリカで復活し始めたと いう。良いも悪いもビジネスモデルとしては確立したようだ。

アメリカと言う所は、簡単に誰でも家が買える国で、都合が悪くな れば簡単にバブルを破たんさせて、いい加減な国でもある。そんな 市場の住宅であるから、ウサギがブルドックに変わった程度でさぞ かし悪かろう安かろうの粗悪品ではないか?と考えるたくなるがは たしてそうだろうか?

日本の住宅の取得の仕組みを見てみよう。日本でもアメリカでも極 端な話、頭金10%以下でも住宅購入ローンを組むことができる。フ ラット35でも可能である。フラット35は最長35年間の住宅ローン 期間である。しかし問題は住み始めて20年もすると住宅の市場価値 が50%前後に下がってしまう。その一方で20年たっても元金の返 済は3分の一程度にすぎない。

一戸建てで土地代金が半分以上占める場合は住宅の価値が下がって も問題ではないと考えるが、土地の価値はローン設定の当初から購 入価格の50-60%にしか評価しない。更に現在の都心部の住宅はほ とんどが分譲マンションであり建屋の価格が大半を占める。建物の 価値劣化は大きな問題だ。

つまり頭金2-30%の住宅購入においては、35年間のローン設定期間 中、購入してしばらくしてからローン残債が半分以下になる25年く らいまで、ほとんどの物件で債務より資産価値が低くなる債務超過 になりつづける。日本の住宅の25年後の価値はほとんど土地の価 値しかない評価の仕方である。どんな億ションでも建売りでもすべ てが債務超過になる。住宅ローン借入者はすべて団体生命に入る。 つまりその人の所得で担保不足をカバーしているのである。

日本の住宅市場では、債務超過は途中で売ることができないシステ ムになっている。したがって生活スタイルも半永久的にそこに住む ことになる。始めから売ることを前提とするなら大事にするが、自 分で一生使い古すなら手入れもしなくなる。人生スタイルの変化に 応じて改築するはずだが、実際改築する工務店、大工の業界が高齢 化で廃れてしまっている。ウサギ小屋に住み続けなくてはならない 窮屈な生活スタイルだ。

債務超過で破綻すると、たいてい事件物物件で嫌われ、結果的に壊 されて更地にされる。こうなると住宅の社会的価値はほとんどない まったくひどい家だということになる。これは住宅がウサギ小屋な のか市場システムがウサギなのか?

債務超過にならないためには、頭金が多くありローン設定(LTV)が 低いか、家の時価が下がらないようにするかが必要になる。アメリ カの住宅は一般的に住宅価格に占める土地のウエイトが低いにもか かわらず時価がそこまで下がることはない。

日本人は物を大事にする?ほんとか?家にカナズチ、ペンチ以上の 大工道具がある家がどれだけあろうか?アメリカお父さんは多くが 趣味が日曜大工で、ガレージにはプロ顔負けのお父さんの大工道具 が一式ある。メンテナンスで価値を上げるシステムがアメリカには ある。それは売るシステムがあるからだ。

もう一つ根本的な考え方は、住宅価格のインフレ政策である。住宅 価格がアンダーファイナンスに陥ると言う事は構造的なデフレとい うことにもなる。これはゾーニングの問題等様々な社会基盤制度か ら作り直す必要があろう。

以前から200年住宅、100年住宅という商品がある。良い商品 さえ作れば市場が付いてくると言うガラパゴス思想はいまだに日本 に顕在である。200年という概念は売り継がれてその都度ファイ ナンスがつく投資市場が必要になる。すべて債務超過になる資産に ファイナンスはつかない。200年住宅にはそれ相当のファイナン スビジネスモデルが必要なのである。

住宅価格の価値が20年で半分以下になる経済システム、社会システ ムがすべてを物語っている。日本の住宅はウサギ小屋を否定できる か?

業界によっては50%以上が非正社員となり、所得で住宅をローンを 担保するシステムが成り立たなくなる。都心の低層住宅の容積率規 制のあるところが高齢化で空家ばかりになり、日本全体の空き家率 が20%にもなろうとしている状況である。

人口推定で100年後人口が半分になる。半分の人口で今の日本の 固定資産総額を維持する事は出来ない。日本の固定資産総額が10 0年後半分以下になる必要がある。これは地方の山村では実質マイ ナスになる事を意味している。持続的不可能な住宅制度をどのよう に変えていくか?

以上

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