ニュースレターバックナンバー

===[1999-2000年末年始特集号]=========
 「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
       主宰 川津商事株式会社
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   テーマ: 名古屋のトレンド(1999−2000)

「副都心」と言う言葉から何処を想像しますか。

名古屋で言えば金山地区が一時期言われたかと記憶しております。東京で言えば新宿副都心を思い出します。しかし今や東京では池袋副都心、大崎副都心等いくつも副都心と呼ばれるエリアが登場しています。

大崎副都心は当ニュースレターでも取り上げましたが、現在の東京のビジネス街のトレンドのナンバーワンです。副都心は機能的に見ると、都市機能の分散と言う意味があるようです。都市機能を分散することによって不効率な過密性を無くし、且つ常に活性化していくことがメリットのようです。

分散する受け皿がいくつも出てくること事態、東京の経済力の強さを感じます。東京と比べれば名古屋は、分散以前に、交通アクセスなどの社会基盤を更に高度に整備させ、まだまだ集中によるエリアの育成が必要ではないかと考えます。

名古屋では、JRツインビルに続き、牛島の再開発、豊田・毎日ビル再開発等の計画が打ち出され、新しいビジネス街がようやくできつつありますが、まだまだ名古屋の場合、分散させてしまうと焦点が解らなくなるのではないでしょうか。明らかに東京と名古屋の格差がビジネスの質、規模共に一段と進んだと言えるでしょう。

名古屋はどのようなエリアが地殻変動を起こしているのでしょうか。
以前取り上げた東京での地殻変動の特徴は、
1,高収益を挙げる企業が誕生もしくは流入していること。
2,大規模な開発が可能なエリア。
3,交通などの社会基盤整備が進むこと。
の3点でした。
1,で考えられるのが、JRツインビルに移転した優良企業及び、それに付随する企業の移動流入が見込まれる名古屋駅周辺。パソコン販売などインターネット産業に象徴されるされる大須。エリアが細分化してそれぞれのコンセプトにより競合、活性化が進む栄地区、ナディアパークから丸栄の栄西地区、三越の再開発を中心に活性化が期待される栄中心部等がそれである。

2,で考えられるのが笹島国鉄跡地。名古屋港周辺。

3,交通整備が影響をするところが、ガイドウエイバスによる守山の志段味サイエンスパーク。西名古屋港線の旅客化による名古屋港ベイエリア。地下鉄4号線開通による住宅街の高級化。21世紀には平和公園の移転、利用論議なども出てくるかもしれません。新中部国際空港ゲートエリア。

2,3はどちらかと言えば社会基盤整備のような外部要因であります。1の高収益の企業の誕生はベンチャービジネスの一言で片付けられるのではなく、21世紀に向けて新しいビジネスが当然育つ必要があります。結論から言えば、この3つの要素をすべて兼ね備えたエリアは名古屋にはないということです。

多くのベンチャービジネスをはぐくむ東京のエリアブランドとして育った「シブヤ」の特徴は、これから10年20年先の社会の主体となる若者の街であること。新しいスタイルの衣料、飲食が存在していること。衣料は単に着る服ではなく、自己主張する表現アメニティーと言うコンセプトになっていることである。

日本人はブランドに弱いと言う考えで、現象を片付けてしまう方が多いが、新しいファッションを作り出している彼らはいわゆるペースト思考、いろんなものを切り張りして、組み合わせることにより、新しい独自の自己表現をしている。

その自己表現のエネルギーは決してブランドに迎合することなく、そのブランドをうまく利用して十分に独自性を楽しんでいる。当然そこでは独自の新しいブランドが次から次へと生まれ、やがて新しいベンチャー企業に育つ。

飲食もしかり、単に喫茶店ではなく、コーヒーというコンセプトに新たなコンセプトを見いだして、ドトールコーヒー、カフェドクリエが成功している。

旅行会社のIHSは単に人を運ぶ運送のチケットを販売しているのではない。若者の旅行に対するニーズをうまく引き出し、それをパッケージにして新しい価格を導入したところに新鮮さが受け入れられたのではないか。 いずれの企業もシブヤに拠点を置くベンチャー企業、もしくは渋谷のエリヤに魅力を感じて流入して、更にそこで成長している企業である。

これらの特徴を見てみると、共通して見えるのがすべてのビジネスにアメニティーあるいはエンターテインメントがコンセプトとして前面に押し出されているのではないかと考える。

これらのエンターテインメント産業こそが、第3次産業であるサービス産業から派生して生まれた、21世紀型の都市型新産業であると位置づけたい。第3次産業が確認されてからもうどれだけ経つのだろうか?第4次産業が言われないのは、日本に新しい産業形態が生まれていないことを意味する。

例えば今ではスポーツと言う産業にはキャラクターグッズが付きものである。携帯電話にも様々なファンシーグッズが付き物である。おおよそあらゆる産業にはノベルティーグッズ無くしては成り立たない。漫画から派生したキャラクター文化、アメニティー等を通して表現されるエンターテインメント。

スポーツ、旅行、衣料、飲食を通して求められるエンターテインメントなくして、それぞれのカテゴリがもはや成り立たなくなりつつある。エンターテインメントを作り出す仕組みがビジネスの大きなウエイトを持ち始めた。

電通のクリエーターの話を聞けばもっと解りやすい。缶コーヒーのテレビ宣伝では、売る商品はコーヒーではなく飯島直子の「安らぎ」だそうだ。コーヒーではなく「安らぎ」というアメニティーでなくては、ビジネスにならないと言う。決して第4次産業を定義しようと言うのではない。しかしアメニティに代表されるエンターテインメント産業に大きなトレンドを感じる。

さて名古屋のエリアコンセプトを再度見てみましょう。
ほとんどの商店街が衰退している中で唯一元気がある中区大須。よく言われる、たまたまパソコンショップが有ったから良かっただけ、という酷評に明確に反論する答えは今の所確かに無い。

その一方で大須には衣料の販売、また新しい飲食店などが育ち始めている。しかしそのコンセプトに若者がペースト思考によって新しいブランドが生まれるようなアメニティー性はまだ育っていない。従前のアウトレットとニューブランドの違いは何処にあるのだろうか。

大須の持つ物販の特異性にエンターテインメントが求められ、売られている商品から、ペースト思考による自分のオリジナリティーが求められ、それが表現できる様になれば、新しいキャラクター、ニューブランドが生まれてくるのではないかと考える。それでこそ始めて名古屋のアメ横ではなく、名古屋のシブヤと言われるようになるのではないでしょうか。

大須あたりの衣料の販売店では、すでに大須で育った「カリスマ店員」がいるのではないだろうか。後一歩のところまで来ているのではないかと感じる。

ご存じの通り、丸栄百貨店が「カリスマ店員」を導入して、エリアとしての主張を持ち始めた。今や丸栄の1階に男性客を見かけることはない。2階に中年女性を見かけることもない。いてもそれは業者の人たちだろう。

市場間競走が起きてくる。1企業、1ブランド、1ショップだけで人を呼び込むことは不可能な時代です。エリアのコンセプトを明確にして、エリア市場で競争する時代です。渋谷に企業が移転するのもそのためとかんがえます。

市場間競走の地殻変動を甘く見てはいけない。実際の収益はともかく、最近日曜日昼の時間帯の人の流れが新しくできている。ナディアパークをはさんで。東がパルコ、北が丸栄の動線である。もちろん特定の若年層ではある。

今までのように三越、松坂屋、パルコの直線的な動線は、決してにぎやかさを失っているとは言わないが、明らかに年齢的な差別化が生じていると感じる。これは大津通を見れば明らかである。大津通の西側歩道、つまり松坂屋の反対側の歩道の人の流れが明らかに増えている。しかも元気のある若者たちだ。

街並みも変化している。東側歩道に比べてビルが新しいく華やかだ。それに比べて東側歩道は狭く、松坂屋本店の様な開放感のないの冷たい頑固な建物、三越横の大きな駐車場。方や西側歩道はマクドナルド、あるいはカフェなどができにぎわっている。

ナディアパークなどバックに抱える西側歩道と、フルラインナップデパートとしての存在が薄くなり、売り上げを落とし、リストラを敢行している松坂屋を擁している東側歩道との違いが、ボディブローのように利いているのではないか。

松坂屋本店の正面入り口はどちらかと、最近の若い人たちに聞くと、東の久屋通り側だという。年輩の人たちにすればおそらく大津通がすべての中心だと思っているはずである。

いつの間にか松坂屋本店は大津通側を閉じてしまったようだ。

都市にとっては、通りも立派なブランドエクイティーである。通りは車線によっても、ブランド認知は違う。一度無くしたブランドエクイティを取り戻すことは至難の業である。

中区丸の内2丁目、3丁目界隈をのぞいてみましょう。この界隈は戦後から続いた名古屋の繊維関連、卸を中心にした商事会社等小規模会社、事務所が集まるエリアです。また丸の内は弁護士のブランドエリアでもあります。弁護士の名刺の住所に丸の内が入っていればとりあえず安心。

しかしその丸の内も最近の不景気により、かなりの事務所、会社が移転をしていきました。バブル時期には地価が最高坪1000万円以上したエリアです。最近では安値で坪200万円を割るような物件も出てました。

会社、事務所が退去した後に今風のイタメシ、ワインバー、おしゃれな居酒屋などが多く出店しています。スナック、クラブがあるわけでなく、錦三のようにおじさんたちが闊歩するわけでなく、外車が横着に行き来するわけでない。何処か閑静さがまだ残る中に、ある程度の年代までの人たちの空間ができつつある。

かつての歓楽街の女子大小路から錦三に移り、住吉に移りゆく街の形成の始まりはひょとしたらこん状態だったのだろうかと想像してしまう。会社帰りの人たち20−30歳台の人たちが定着すればむこう10年20年とこの地域が繁華街として展開する可能性がある。地殻変動の予感が感じられる。

丸の内は弊社の職業柄、値段的に今大変不動産投資として魅力を感じるエリアである。違った意味でのトレンドでもある。弊社も状況が許せば仕入れたい。

丸の内の隣接した錦2丁目界隈も衣料に関しては、大須の比ではないパワーを持っている。卸問屋が現存して、衣料に関する企画、販売ノウハウを持っている地域である。

このあたりを例えば、日曜日に一般車を進入禁止にして、伏見の地下鉄駅からの動線をバリアフリーにして、公共機関交通の無料の高齢者を呼び込み、高齢者用に衣料販売、その他飲食などにシニアエンターテインメントを付加すれば、大須とは差別化のあるおもしろい可能性を秘めた地域になるとかんがえます。

港区の品川ベイシティー等もコンセプトの核に、シネマコンプレックスというエンターテインメントを持ち込んでいます。

港区のベイシティー、あるいは稲沢のユナイテッドシネマの発想は大規模商業施設によく使われた手法である。東京新宿の高島屋タイムズスクエア東急ハンズ、HMV、紀伊国屋、セガなどの複合施設です。

東京だけではない。福岡のキャナルシティーは劇団四季、セガ、ホテル、ダイエーを核としている。これらは既存のエンターテインメイントを張り付けている。既存のものの切り張りだけで終わってしまうのではなく、そこから独自のエンターテインメント育つかどうかが鍵となると考えます。

既存のエンターテインメントの色彩の強い地域として、劇団四季の錦1丁目、県芸文センターの東区泉、さらにはアングラなイメージを醸し出す今池などが挙げられます。

愛知県芸術文化センターは最近、良いコンサートが定着してきたと思います。大規模プロジェクトにおいて良く、器だけ作ってもだめという批判する人がいますが、コンテンツのない人に限って永い目で物事を考えられないと思います。新しいビジネスは新しい器を求めるのです。

栄公園の建設も期待がかかります。良い音楽を聴いた後に余韻を楽しめるようなおしゃれな飲食エリアがほしい。それこそ飲食店とエンターテインメントの融合である。

久屋大通の公園通り、何も全体を一つのコンセプトのする必要はない。いくつものコンセプトエリアが存在しても良いはずである。残念なのは公園自体が木々で囲まれて、外から中が見えない。非常に閉鎖的な作りになってしまっている。

私どもの不動産業者の経験では、名古屋は東京の2年遅れでトレンドがやってきます。新都市型産業の形成が、東京の大崎ゲートウエーに代表される副都心、あるいは渋谷のようなアメニティ型エンターテインメント新産業によって起きるのであれば、2年後名古屋で起きる地殻変動は大須?名古屋駅前?栄?丸の内?何処になるのでしょうか。

衣料・食・エンターテインメントの3つのコンセプトが融合したとき、新都市型産業がベンチャーとして生まれるのではないでしょうか。ビジネスにつながるトレンドを創造しなくてはなりません。

                          以上

今年も名古屋ビジネス情報をご利用いただきましてありがとうございました。2000年問題がどのようになっているか解りませんが、来年もおかわりなくご利用していただけることを心待ちにしております。ありがとうございました。



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