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主宰:川津商事株式会社
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大名古屋ビルの事務所移転ステージ

〈2011年9月20日〉

草刈り場と化した名古屋のファイナンス市場

東海地方の産業クラスターの近代化には、そのフロントの大都市の 都心部の近代化がカギとなっていることを前号でみてきた。都市構 造の近代化とは、古くなった公的な社会インフラの再整備だけでな く、老朽化した民間のオフィスビル、商業施設等民間商業基盤の再 開発をさす。

名古屋では、名古屋駅前を中心に民間レベルの大型再開発がいくつ も進んでいるが、現実には、これらに隣接する地場地主の中小の商 業ビルの多くが、築30年以上経ち、中には耐震補強すらできていな い物件がある。

これらの、商業ビルが近代化され、駅前のミッドランド名古屋、タ ワーズなどの高層ビルなどの生産性の高い先端ビジネスをサポート するビジネスセクターとして、追随し進化することが、この地域の 第三次産業全体の底上げとなるはずである。

社会基盤、商業施設の更新には必ずファイナンスが必要となる。名 古屋のファイナンスシステムがこれらの市場・社会ニーズに応えら れるかどうかが、逆に東海地方の産業クラスターの趨勢に大きな影 響を与えるともいえよう。

名古屋の金融市場の現状は、草刈り場と化しているといっても過言 ではない。最近京都銀行が名古屋市場に再参入をしてきた。それ以 前にメガバンク各行が法人営業部の格上げなど、この東海地方特に 名古屋都心部の営業を強化している。

これは本来の既存の東海地方の金融機関からすれば屈辱的な状況で ある。本来なら古参の地域金融機関が市場を十分に把握しているべ きである。しかし新たな参入者に逆に頼らざるを得ない状況になっ ているわけだ。それには現実に従来の地場金融が十分にリスクを取 れず、市場ニーズに対応できていない状況がある。

例えば名古屋駅で地域の地主が所有する200坪の土地があり、それ を再開発しようとする。容積率をいっぱい使えば15階前後の商業ビ ルができる。これに要する資金はやはり15億円前後となろう。この ファイナンスを地域の名古屋の地元金融機関単独で対応できるとこ ろはない。シンジケートローンを組んでもせいぜい10億円程度だろ う。

現在名古屋駅周辺の中小ビルのほとんどが建て替えの構想を持って いる。しかしほとんどが資金のあてがなく、冒頭の耐震補強すらま まならない状況にあるわけだ。

これは、この地域の第2地銀、従来からの地銀を含めてすべてにお いて、名古屋の市場がファイナンス市場に要求するリスクの規模に 対して過小資本になってしまっているわけだが、本来このクラスの リスクに対応する金融機関が名古屋では旧東海銀行であった。

東海銀行がメガバンクに再編されたことにより、東海地方の金融シ ステムのリスク許容力が東京に集められ、グローバル市場に持って いかれてしまった。少なくとも中小企業の運転資金くらいなら何と か残った地域金融機関で対応できるが、社会基盤、商業基盤といっ た大きな資金ロット、リスクを要する投資にはまったくと対応でき ない状況にある。このメガバンクと、残された地域金融との間の空 白市場が草刈り場となっているのである。

金融機関の自己資本比率をみると明らかである。地銀の自己資本比 率び上位にある金融機関が名古屋には不在である。それゆえ地銀で も上位にある京都銀行、静岡銀行など地域金融機関あるいは、本来 グローバル企業を相手にするメガバンクの法人営業部による、名古 屋都心部の地域ファイナンス市場の草刈り場状態になってしまって いると言わざる得ないわけだ。(静岡銀行は本来東海地方の金融機関 であるべきである。)

参考データ http://www.keiyobank.co.jp/common/20110330_kinyujar.pdf 9月16日の読売新聞朝刊が、あるい老舗の地方銀行を「東海一」と いう称号を論評していた。この老舗地銀は、誰もが認める岐阜経済 をけん引してきた岐阜県下ナンバーワンの金融機関である。それは 岐阜の地域経済、地域社会に浸透し、地域のリスクに責任を持ち利 益を地域に還元し、地域の社会的責任を果たしてきたからである。

「東海一」の称号も同じである。まず東海地方のフロントである名 古屋の市場ニーズに十分こたえるだけのリスク許容力を持ち、さら に短期的な利益だけでなく長期的に東海地方の利益を還元できる地 域に根差した資本を持ち、儲かる地域だけではなく金融機関が不在 で不便している地域金融など様々な社会ニーズにこたえられて初め て、東海一の称号を与えられる。

市場の現実をみる限り、東海一の地域金融が生まれるにはまだまだ 遠い道のりがあるようだ。地域のリスクを十分にとり、地域の利益 を還元し、地域の将来に対して責任を持つ金融機関の育成が、東海 地方の産業の浮沈を握っているといえよう。

ただし、冒頭の社会基盤整備に対するファイナンスを、地域金融で 担当すべく時代ではないという考え方もある。都市構造の近代化が 進まない理由には不動産事業主側にも大きな問題がある。次回は不 動産ファイナンスの新しいトレンドを考えていきたい。

以上

キーワード:三菱東京UFJ東海銀行京都銀行静岡銀行十六銀行名古屋駅前地域金融都市生産性都市構造