ニュースレターバックナンバー

====[2007-9-10号]===============
  「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
     主宰 川津商事株式会社
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名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」 へのご登録ありがとうございます。当社は不動産にとどまらず 広くビジネス情報をお届けいたします。今回は、

  テーマ: 名古屋の資本市場は大丈夫か?

台風が過ぎ去ってもまだまだ猛暑が続いています。残暑お見舞い申 し上げます。今年盆休みに沖縄に行かれた方が、帰ってこられて開 口一番「沖縄の涼しかったこと」。都心部に暑さに比べれば、石垣の 自然は避暑ともいえるところだったそうです。

今後は「沖縄へ避暑に行きます」なんて事が流行るかも知れません。 ちなみにこの方は岐阜の人で、沖縄の人に、日本で一番暑いところ (多治見)から来られたのかねと言われたそうです。

こうなると、都心部郊外の避暑ビジネス別荘地開発も将来的に注目 されるビジネスになるのかもしれません。

さて、 企業であれ、事業であれ、投資であれ銀行融資だけでは成り立たな い事くらい誰にも理解していただけよう。銀行融資はリスクを取れ ない。成長するレバレッジを利かすだけである。リスクをとるのは 資本である。

今世界中でクレジットクランチを起こしているサブプライムローン 問題によって危機にさらされているも資本市場である。日本でも新 聞紙上で大騒ぎではあるが、銀行の被害は軽微であるかの対岸の火 事的論評である。資本市場の問題の本質はどこにあるのか?資本市 場の重要性を考えてみたい。

一般に会社を起こして事業をする時その出口となる方法には、親族 の相続、他人への禅譲、売買、清算、廃業である。これは日本では 錬金術のように見られる出口戦略の基本である。売買がM&Aであ る。この戦略がもし無ければ倒産でしかない。倒産しかないような 市場では誰も起業をしない。この出口戦略の対象となるのが資本の 移転である。

今資本市場が非常の大きなリスクに曝されている。サブプライムロ ーン証券問題がまさにその典型である。住宅ローンをプールして証 券化しオフバランスしたものではあるが、ローン全体の中でも下位 の劣後の一部のリスクでしかなかった。しかしそれがヘッジファン ドによって高いレバレッジを利かされて、想定元本以上に増幅した わけだ。

最近、保険デリバティブという商品が多くなっている。イメージの 悪いデリバティブという言葉を避けて、保険金融派生商品とも言う。 冷夏になるとエアコンが売れない。このような天候リスクを補填す る金融保険である。天候デリバティブとも言う。最近で新聞紙上で 取り上げられたデズニーランドが地震デリバティブ保険を購入した。 これも地震被害をヘッジした金融商品である。

これらは従来の保険商品とは違う金融商品である。保険と金融商品 との具体的な違いは、保険は損害金が確定しないと支払われない。 金融商品は確定なしに約定が支払われる。そのほかいろんな違いが あるが、なぜこのようなビジネスモデルが急成長しているか?

保険業界では、大きな地震があると業界の存亡を左右するような損 害金が発生する。通常このような大きな損害が予想され、単体の保 険企業だけでリスクが取れない時、再保険がかけられる。イギリス のロイド保険などが再保険業務を行うところである。

しかしこの再保険をしてもなお、リスクが取れない大きな損害が最 近生じている。最近の地震、ハリケーンなどの被害の巨大化である。 これらの超過リスクは保険会社の資本が引き受ける。保険会社にリ スクを引き受けるだけの資本が不足していると、他の保険業界にも 引き受けてもらう。これが再保険である。

しかしロイド保険といえども、破綻をする可能性が現実にある。そ うなると再々保険を考えなくてはならない。理屈では再々・・・再 保険も可能であるが、業界の中のたらいまわしでその分保険料が高 くなる。つまり保険業界の資本が少ないゆえにこのような限界に近 づくわけである。

これに対して金融デリバティブ保険の市場となるのは、保険会社の 資本金総額ではなく、金融資本市場である。保険業界の資本規模を はるかに超える規模である。したがってリスクを受けられる許容範 囲も大きい。これは結果的に保険コストに違いがでてくる事になる。

もうここまで説明すれば、皆さんもお分かりでしょう。サブプライ ムローン問題も問題の根源も、下層所得層の住宅バブルの一部の破 綻である。これだけで世界の資本市場が問題になるものではない。 しかし現実にいろんなニーズを取り込み始めた資本市場が、非常に 多くのリスクにさらされ始めた事になる。

専門用語で言えば、金融技術の発達で、世界中の金融資本市場のリ スクエクスポージャーが急速に拡大していることを示している。さ て、資本市場のリスクの問題は、このような大きな問題だけではな い。

今中小企業の事業継承が非常に難しくなってきている。具体的には 出口戦略の典型である身内の相続ができなくなってきているようだ。 その理由が、単に後継者がいないだけでなく、後継者がいてもリス クを取れる、あるいは取ろうとする後継者がいないという事がもっ とも大きな理由のようだ。

前回のニュースレターでも書いたが、中小企業の企業或いは事業部 門の潜在的売り手が非常に大きくなっているわけだ。中小企業の出 口、行き場が無くなり廃業、倒産が進めばこの先10年後サービス産 業を持たない名古屋の地域経済の趨勢はどうなろうか?

今日本の産業構造は全国平均で67%が第3次産業の従事している。 しかし愛知県は違う。トヨタをはじめとする輸送機器関連産業クラ スターの拠点であるゆえにといえよう。第3次産業に従事している のは61%超しかいない。ちなみに東京は77%である。愛知県のサー ビス産業が全国平均よりはるかに低いわけだ。(データH17)

自動車などの製造産業では、多様な中小企業の活躍をなしにはその 隆盛はありえない。この中小の製造企業に融資をする銀行はあって も、資本を引き受けるセクターがいなくなれば、当然経済が収縮す る事となる。

資本を適材適所に配分する市場メカニズムが必要になる。これが株 式市場になるわけであるが、これは上場している資本しか対象にし ていない。中小企業の資本の移転に関する情報交換、移転市場がま ったく機能していない事になる。

名古屋証券市場が新しい器を作った。名古屋らしい資本市場への期 待がこのようなところにあるのではないだろうか?東海銀行がなく なって以来、名古屋でいっそう銀行による統治がなくなってしまっ た。名古屋という地域経済が今欲するものは、資本市場の新たな模 索であろう。

以上



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