ニュースレターバックナンバー

====[2007-4-27号]===============
  「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
     主宰 川津商事株式会社
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名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」 へのご登録ありがとうございます。当社は不動産にとどまらず 広くビジネス情報をお届けいたします。今回は、

  テーマ:愛知県の観光産業のポジショニング

先般、東京のあるシンクタンクから名古屋はなぜホテルより旅館が 多いのですかと聞かれて困ってしまった。そこで以前あるマスコミ 関係者に聞いた話を思い出した。名古屋駅前の現在の地主のルーツ をたどると旅館業者が非常に多いということである。

なるほど、名古屋駅前の知人関係者、現在駅前でビルを所有してい る地主さんには元旅館業者が多い。しかし現在見てみると、老舗は 笹島(名駅南1丁目)に舞鶴館が残っている程度かも知れない。こ の舞鶴館が現代風の非常にきれいな施設であるが、創業は大正15 年と非常に古い老舗の旅館である。

ちなみにこの名駅の南あたりは、私の記憶が正しければ、その昔禰 宜(ねぎ)町と呼ばれていたはず。禰宜は神社の仕事あるいは神事 をつかさどる名前に由来する。人や親方衆が集まり当然旅籠屋など が多かったことが想像される。

さて、またいつものような前置きが長くなった。先般3月29日の日 経新聞の経済教室に観光振興のテーマが掲載されていた。日本の観 光統計がようやく整備されることになり、その予備調査が、昨年末 にまとめられ、その結果を取り上げたものであった。

おおもとの国土交通省の公表資料は以下に公表されている。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanko/pdf/nijiyobihoukoku.pdf
弊社がまとめなおした参考ワーキングペーパー
(愛知県の観光産業のポジショニング)
http://www.kawatu.co.jp/nagoya/kwo/kankou.pdf
この日経の経済教室の解説者によると、まず今後人口減少の中で、 日本全体の観光産業を振興しなくてはならないことが重要であると している。そのために今回はじめて観光産業の実態が、統計的に明 らかにされたことは非常に重要である。そしてその中でいくつかの 特徴を挙げているが、地方の風光明媚な観光資源・お祭り産業では なく、大都市の大型宿泊施設に観光旅行者が集中する傾向があると している。

そしてこの記事の中では、「愛知県」という活字は一つも出てこなか った。データによると愛知県の観光度指数は44位にあった。日本の 中での重要な観光拠点という認識はまったくなされていないわけだ。 観光度指数とは「年間宿泊者数/人口」である。しかしデータによ ると施設の稼動は悪くない。逆に指数が高いが反対に稼働率が低い のが、観光産業資源が多くあるように思われている石川県、長野県 である。

つまり結論から言うと、愛知県は観光客数が低いが、施設の稼働率 (10位)はそれほど低くないということである。つまり施設がそれ ほど多くないから、都市人口の割に観光客数が少ないことが、都市 の生産性から言ってもそれほど目立たないということになる。

上記の弊社のワーキングペーパーを参照していただきたい。巻末の 表3を見ていただくと愛知県は全体の稼働率は確かに10位である。 この内訳を見てみると小規模宿泊施設の稼働率がよく(6位)、反対 に大規模宿泊施設の稼働率は非常に悪い(15位)。

さて、今回のニュースレターの論法は、全国の傾向としては、大規 模宿泊施設に観光客が集まる。そのなかで名古屋はホテルが少なく 旅館が多いようだ。愛知県においては、観光客は少ないが全体の稼 働率はそれほど低くないということである。しかし内訳を見てみる と、少ないながらも更に大型宿泊施設の稼働率が悪い現状がある。 名古屋の大型宿泊施設のあり方が問題になるという結論になる。

では最初の名古屋はなぜ大型ホテル施設が少ないのか?の問いに戻 る。まず名古屋で開催される国際会議、大きなカンファレンスが少 ない。国際ゲートがなかった。世界ブランドのホテルがない。ある いはあくまで東京、大阪の通過点でしかない、ビジネス目的が多い などが考えられる。そもそも大型ホテルを誘致しない。都市のマネ ジメント上ホテルなどの施設を重要視していないという事になるか もしれない。

もうひとつ国土交通省のデータから国別の観光来客数を見てみると、 愛知県はヨーロッパ、オーストラリアが少なくアメリカが多い。日 本全体が中国香港台湾などのアジア系の観光客が多い中では、輸送 関連産業ビジネスの存在が大きい名古屋の特徴を反映しているのか もしれない。

日経新聞の論者が言っているように、大規模宿泊施設に観光客は集 中する傾向にあることを前提にして考えるなら、名古屋は大規模宿 泊施設が多くはなく、かつ稼働率が低いところに問題が見えてきそ うである。となると対策が見えてくるような気がする。

大規模宿泊施設、ホテルの誘致の問題は、需要と供給の問題である。 過去名古屋の場合必ず、新しいホテルができるたびに、名古屋はそれ ほど需要はないと言うのがお決まりの文句である。供給過多に過剰 に反応する論評が出てくる。東急ホテル、ヒルトンホテル、マリオット の時がそうであった。JR東海のセントラルタワーズのオフィス棟 ができたときのオフィス過剰問題と同じである。名古屋の百貨店市 場の例も同じであった。

オフィスの新しい供給の結果は、古い施設は競争力をなくすが、新 しい最新の施設は活況を呈している。ホテルも同じであった。古い 近鉄系の都ホテルなどが撤退をした。百貨店も競争原理による恩恵 を地域経済が享受しているといえよう。

最近読みたかった本の中で、ようやく読むことができた本に「地球 の自叙伝」という本がある。この本には、花粉症の鼻つまりが一発 で通るようなわかりやすいことが書いてあった。

生物の種というのは実際のマッチングに必要な固体数を、はるかに 超える数が生まれている。生態系においては種の保存に必要な個体 数をはるかに超えた過剰生産が行われているわけだ。しかしこの種 の個体数が過剰に存在することによって、はじめて激しい淘汰がお き、より強い固体が生き残り、種の保存がより強固に維持されると いうものだ。個体数の過剰がなくなり、淘汰が起きなくなるような 一定数を割ると種は滅亡するということらしい。

市場競争のメカニズムでは、過剰生産が景気変動を起こし、時には バブルを発生させ、景気循環を押し進める。ここの競争原理による 市場の活性化がおきる。この市場にダイナミズムがあれば非常に魅 力のある市場となる。

ホテル市場の供給過剰がないことは、それ自体非常に安定した市場 となり心配ない。従来の名古屋の百貨店市場と同じである。過剰競 争は非常に強い市場を生み出すが、常に競争にさらされて脅威が存 在する。しかし競争による淘汰がない市場では明らかの周囲から魅 力を感じなくなる。

リスクを取れるファンドマネーも日本の市場には存在してきている。 リスクをとる方法もあるわけだ。新しい一流の大型ホテルの存在も 名古屋の将来の可能性を左右させる大きな要素となろう。

以上



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