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====[2007-1-20号]===============
  「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
     主宰 川津商事株式会社
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名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」 へのご登録ありがとうございます。当社は不動産にとどまらず 広くビジネス情報をお届けいたします。今回は、

  テーマ:大都市圏への人口集中、高齢化がもたらす都市の収益性

日経新聞によると、東京圏、名古屋圏への人口流入が加速している。 しかも転入の数がバブル経済並みであるとしている。一方3大都市 圏のうち大阪圏については転出が転入を超過しているとしている。 名古屋圏とは愛知県、三重県、岐阜県。(日経07.1.12)

名古屋が元気である印象を植え付けるデータである。この人口の社 会的動態を更に見てみようと、流入人口の年齢層を調べてみたがそ のようなデータはなかった。少子高齢化の問題が、市場の中で現実 にどの様な問題となって現れているのか常に確認する必要がある。

国土省の「大都市圏郊外部の人口・高齢化動向」2006から名古屋圏 の人口動態の特徴を拾ってみよう。

都市圏の比較として、東京都区部への平均通勤時間56分、大阪都 心部へが52分、名古屋の中心3区への平均通勤時間が44分だそ うであろう。人口増減においては2000−2005年で、全国で減少して いるが、首都圏、近畿圏、中部圏では増加している。その中でも東 京圏(3.2%)、名古屋圏(2.0%)が顕著である。

人口増加率の高い市、区を見てみると。全国の増加率トップ30位 には、愛知県三好町(6位)、日進市(23位)が入っている。この 2市町は名古屋圏の都心部ではなく郊外都市である。しかし東京、 大阪では、郊外都市より都心部の区が30位に内幾つか入っている が、名古屋では入っていないのが特徴である。

名古屋では都心区が1995-2000年に減少する区があったが、確かに 2000年以降増加をしている。しかし輸送機器関連産業クラスターで ある愛知県三河地区においては、一貫した人口の増加が見られるわ けだ。東京、大阪では都心からの通勤距離時間が遠くなるにつれて、 人口の増加率が下がる傾向が2000年以降顕著になってきたが、名古 屋ではこの傾向が見られない。

3大都市圏の将来人口としては、近畿圏が2005年でピークをうち、 中部圏が2010年、首都圏が2015年でピークとなり以降減少すると 同報告書で予測している。因みに名古屋市では2010年に223.1万人 となるが、2020年には221.4万人となるとしている。

さて問題の高齢化である。
同報告書の予測を先に見てみよう。名古屋市の高齢化(65歳以上) 率が200年15.7%、2010年19.3%、2020年で21.9%としている。 後期高齢化(75歳)率で2000年6.0%、2010年8.2%、2020年10.4% である。

東京都区部、大阪京都神戸に比べて名古屋市の高齢化率は3%ほど 低い。これは各都市圏の郊外を含めても2%ほど低い。その一方で、 中部圏では首都圏、関西圏に比べて代表交通手段として自動車が占 める割合が2倍であるとしている。

名古屋は、自動車による交通手段が大きなウエイトを占めている。 都心からの距離による郊外での人口減の急増が見られない事、或い は高齢化の動態がこの影響を受けていると報告書では明記している。

しかし自動車への依存が高い分、特に郊外部(名古屋市郊外で概ね 60分の通勤圏)における、自動車等を使えなくなる後期高齢者の 増加に対する問題がでてくるとしている。バリアフリー、公共交通 機関等の都市整備が必要としている。

さて、このようなデータを見ながら、不動産屋の目からから名古屋 の高齢化社会の影響を見てみる。名古屋のデータは他と比べて比較 的良いと判断できるものであろう。しかしこれはすべて平均である。 名古屋の都心部あっても、既に高齢化が進んでいるエリアとそうで ないエリアの間に、大きな格差が顕在化している。

高齢者が多いエリア(一つの駅を中心とした地域エリア)では確実 に消費が落ち込み、都市の生産性、収益性が落ちている。若い人が いないエリアでは消費が少ない。結果的に商業店舗の数、規模が確 実に収縮している。大量消費でコスト削減を維持できている飲食店、 コンビニ、物販店舗等、がなくなりはしないがその店舗数を減らし ている。

そもそも本来若者向けのコンビニ産業は、少子化によって確実に売 上を落としている。現在高齢者向けに戦略を転換しているが間に合 わない。大量に販売する事で収益を上げる回転寿司等も収益を落 としている。これらは全体の店舗こそ減っていないが高齢化によっ て収益性を落としているのは確実である。

都市の核となる大規模商業施設が採算を悪くして、撤退してそのエ リアの利便性が悪くなる話は良く取り上げられるが、もっと身近な 話題として高齢者しかいない小さなエリアで、コンビニが撤退して ライフラインがなくなるという話も近々か出てくるのかもしれない。

愛知県下で、65歳以上の高齢化率が低い市町は、長久手13.8%、東 郷11.0%、三好10.5%、日進市14.4%である。高齢化率が20%以 上の市は蒲郡市、常滑市でしかない。ほか多くは町村部である。因 みに設楽、東栄、豊根は40%以上である。

と言うデータを見た上で現在の名古屋市内の区別の高齢化率データ を見ていただきたい。
    65歳以上 75歳以上 85歳以上
千種区 19.4%   8.7%  2.1%
東区  19.4%   8.8%  2.0%
北区  20.9%   8.6%  1.9%
西区  19.4%   7.9%  2.0%
中村区 23.1%   10.0%  2.5%
中区  18.6%   8.4%  2.1%
昭和区 19.4%   9.1%  2.2%
瑞穂区 20.5%   9.5%  2.2%
熱田区 21.4%   9.7%  2.2%
中川区 18.0%   7.2%  1.7%
港区  17.5%   7.0%  1.7%
南区  21.4%   9.0%  2.1%
守山区 17.2%   6.9%  1.7%
緑区  15.4%   5.9%  1.4%
名東区 14.5%   6.1%  1.4%
天白区 14.6%   5.7%  1.3%
現在のような、若い世代を対象とした消費型の都市構造、産業構造 を持った業態の店舗は20%以上の高齢化したエリアでは機能しな くなり生産性、収益性が低下し、確実に減ってくものと予想できる。 同じコンビニでもTVコマーシャルに出てくる商品は、高齢化率が 高いエリアではおそらく見られなくなるのではないだろうか?

名古屋市の中にあっても、高齢者、少子が進むエリアとそうでない エリアの今後の都市マネジメントが必要になるのは明らかである。 市場原理だけに任せておくと格差が広がるだけである。

高齢者少子型の都市においても十分に収益が上がるような都市マネ ジメントがなされなくては、高齢者を強制移住させる、若者の賃貸 マンションを誘致する等の問題になる事もありうる。 以上



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