ニュースレターバックナンバー

====[2006-11-25]===============
  「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
     主宰 川津商事株式会社
=========================
名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」 へのご登録ありがとうございます。当社は不動産にとどまらず 広くビジネス情報をお届けいたします。今回は、

  テーマ:“bid”入札による不動産資産のプライシング 

市場で“bid”する(値を付ける)と言う事は、相対の任意交渉 で値を決めるのではなく、公開の入札による値付け等を意味する。 市場の存在意義は正にこの値付けの公開性、透明性、信頼性等に左 右される事になる。そして最近、市場原理を重んじるセクターの多 くでこの入札を多用するようになってきた。

IPO(株式などの新規上場)は通常イニシャル・パブリック・オ ファの略である。ベンチャー企業の新規上場株などの最初に公開す るという意味であるが、この“p”のパブリックをプライシングの Pと言う学者も有る。公開の本質が値付けの正当性にある事を物語 っているわけだ。

従来の不動産資産市場は、一所で取引交渉を包括して行なう市場で はなく、相対取引の集合体が市場を形成していた。したがって資産 価格も取引価格と呼ばれる、任意の相対交渉価格が通常市場の相場 の根源にある。

入札方式は、値段を公開して広く募集する方式である。イオンター ネットの普及とともに不動産オークションの考えの中で普及すると 考えられていたが、現実には慣習、実務に合わなくオークションの 延長上にある入札は普及していない。

しかし最近の資産市場では、いろんな形態のbid方式が市場に登 場している。必ずしも公開でなくとも、クローズでも入札によるも の等、任意の相対交渉ではない価格決定が不動産資産市場で確実に 増えている。

一体どの様な事情がこのようなトレンドの背景にあるのであろうか。

訳ありでもなんでもない一般の物件が、一般の入札方式となると、 名古屋の市場では皆腰が引けてしまう。これは東京でも「やりにく い」と言う声がやはり多い。しかし最近、東京から出てくる資産の 処分の関連する物件の多くがbid方式を採用してくる。

特に、大手の金融機関が直接保有する資産などの物件、公的資金・ 準公的資金が関連してくるSPC等の物件、信託関連の物件、そし て弁護士関連の物件に多い。これらは値付けの透明性を求める為に、 あえて任意売買を避ける傾向にある。

先般、東京の大手調査会社の副社長さんとお話をしたが、コンプラ イアンス(法遵守)が求められて、FAX一枚、メールを一通送る にしても必ずもう一人監視人(メールで言えばCCである)が必要 になる。コンプライアンスのために余分な手続きが増え、コストが 非常にかかるようになって来たといわれていた。それでもコンプラ イアンスを要求するのが最近の市場ニーズである。

弁護士ルートで出てくる事件がらみの物件は、非常の安い価格で処 分されるため、一般においしい仕事とされてきた。しかしそこには、 弁護士さんと「気脈」を通じれば、そのおいしい仕事をする事がで きるという不透明さが生じかねない。

事件の当事者の利益で言えば、高いほうが回収増え良い。したがっ て破産財団の資産の処分価格にはその説明責任が求められる。そう いった意味で最近東京では、弁護士さんが資産を処分する時にも入 札方式を用いるようになったようだ。

大手金融機関でも、任意売却した時、その売却価格の正当性に不透 明があると株主訴訟に発展しかねないリスクを役員が抱えている。 したがって駆け引きをして多少でも高く売ることより入札方式を取 ってくる。不正防止という概念に対して市場が強くクローズアップ されているわけだ。

確かに名古屋では、弁護士さんが知らない間に市場に公開されてい ない資産を安く買ったようだ?どうして不動産屋さんでもないのに そんないい物件の情報を持っていたのだろうか?つぶれた会社の資 産があっという間に聞いた事もない不動産会社に名義が変っている。 どうも弁護士さんと気脈を通じた会社らしい。なんて言うもっとも らしい噂が今でも時々聞く。たとえ本当だとしても、問題になる事 すらない。

こう言い切ってしまうと、弁護士さんから怒られるかもしれないが、 実際「先生が買ってもらえるならそのほうが安心です・・」と考え る一般のクライアントも多いのが名古屋の気質ではないだろうか。 名古屋の市場の公開性よりも、任意売買の方が信頼されているとい う事であろう。しかしそこにはたとえ不正がないにしても、不透明 さが残ることになる。

入札が必ずしも高い価格になるとは限らない。しかしこのような資 産処分の値付けに透明性を求めるあまり、現実に、入札を嫌う投資 家がまだまだ多く、応札者の数も限られ、明らかに任意売買した方 が高く売れるとわかっていても、入札方式が取られるようになって きたという事である。

入札は一般に応札者が多い物件は値段が跳ね上がるが、少ない物件 は価格が下がる。入札をしたからといって一概に価格が上がるとは いえない。売主の事を考えるとどちらが良いかは一概に言えない。 どうしても駆け引きが出来ない分売主買主の思惑とかけ離れる。し かし担当者(売買の手続き実行者)が自分の信頼性、透明性を高め ようとすると、売主の利益、意向に関係なく入札方式を取る事にな る。

弊社でもお客から、どこか入札前の物件情報を持ってこられるとこ ろはないのか?と聞かれる事がある。入札が市場に受け入れられて いない側面は大きい。しかし不動産資産の処分がすべて東京に集め られて、このようなフィルターを通して市場の出てくる以上有る程 度は難しい。

入札方式の物件が、なぜ人気が無いかという問題も考える必要があ る。理由としては1.皆が知っている物件はいやだ。2.銀行のファイ ナンスが付きにくい。3.競争はいやだ。じっくり探して買いたい。 等が上げられよう。

1.3.はともかく、2.は確かに入札制度にまだ他の制度がついていけ ていない事を示している。結果的に時間がなく入札できない事にな る。銀行の中には、よく当行では即決しますから入札にも対応しま すと言い切るところが有る。

問題は、即決を期待するのではなく、より良い資産の評価である。 よく当行は他行より厳正に評価しますから、例えば賃料収入は市場 相場より厳しいですといわれる。これは本末転倒である。リスクを 取る自信が無いから市場相場より厳しい審査基準を設けざるを得な い事になる。

資産に市場評価以下しか評価する事ができなければその銀行は自信 のない銀行である。より高い資産価値を見出し果敢にリスクを取る 銀行が良い銀行であるはずである。そうなると、3.のじっくり銀行 を説得しながら時間をかけたい、という投資家の理由も理解できる 事になる。

しかしこのように言い切ってしまうと、銀行は、預金者の大切な資 金を預かっているからリスクなんていうものは簡単には取れないと 開き直る。となると銀行は、このようなリスクテークのビジネスに はじめから関与しない方が良い。名古屋の市場は本当にリスクを取 れるファイナンスを求めなくてはならない。

アメリカでは、大手ユニバーサル銀行、モーゲージリート、モーゲ ージローン専門会社等がこのようなリスクを取る。リスクをとれな い銀行でもローンを仲介したり、証券化したりして市場のニーズに 応えている。

このような市場のインフラの不備が入札制度に対して妨げとなって いえよう。しかし現実にはコンプライアンス、市場の透明性という トレンドは確実に名古屋でも避けて通れなくなってくる。

大手金融機関が直接名古屋で物件を処分する事は今後もないであろ う。それは入札方式にファイナンスも含めて名古屋の市場がついて こられない事を彼らが知っているからである。彼らは東京で処分す る事ができるからまだいい。しかし弁護士ルートの司法的な処分の 場合はどうなるのであろうか?名古屋で事件の資産の処分を、東京 まで持っていく或いはご丁寧に一般入札で行なっている弁護士さん はあまり聞かない。

不動産仲介ビジネスも、コンプライアンスの意味を理解し、お客の ニーズにあったオフバランス、バイアウト、リスクテークの手法そ して何よりもクロージングのやり方を提供していかないと不動産ビ ジネスからはみ出される。

いろんな入札方式が、好むか好まないに限らず、不動産投資ビジネ スに大きく関与してくる方式となると考えなくてはならないだろう。 従来のマッチングだけの仲介ビジネスではついていけなくなる。

蛇足になるが、 不動産ビジネスが大きく変って大変なのは業者だけではない。税理 士、司法書士、弁護士等においても法律、制度、市場のビジネスモ デル(証券化等)が変って非常に混乱している。これらの「士」の 60歳以上の方に新しい事を聞いても「調べて解答します」しかか えってこない。地位があって威張っていてもまったく役に立たない。 変りすぎて新しいことについていけない事は明らかである。従前の 経験、知識が充実している50歳代が一番クロウしている。30歳 代の若手に聞くと、古く役に立たなくなった事を知らない分、非常 に明快に違和感なく新しい制度・知識・ノウハウが出てくる。悲し いかなこれが現実でも有る。

以上



| ニュースレター |  

ご質問などがございましたらお気軽にお問い合わせください。

川津商事株式会社 川津ビル株式会社 
弊社へのお問い合わせ